日本はIT化が遅いのか?動画が後押し出来る事は?

日本はIT化が遅いのか?動画が後押し出来る事は?
2020年10月12日 ninefield

すでに総世帯の7割以上がスマートフォンを所有し、生活の主な分野が「IT化」しているはずだった日本。しかし、教育分野でのオンライン化の遅れを感じたり、これまでも様々な給付金の申請や確定申告などについてオンラインでの手続きになじみがなく、結局、紙でのアナログ申請で何とか給付や確定申告手続きに漕ぎつけたという人も少なくなかったでしょう。企業のオンライン申告の利用状況は年々上がってきていますが、個人への普及が今後の「IT化」を握っていると言えます。
政府は、IT化が、諸外国と大きな差がついていることを重く見て「目玉政策」の一つとして、「デジタル庁」の新設を掲げた他、携帯電話の値下げなど、デジタル関連の課題解決に次々と手を打っていますが、映像の世界でも、オンライン技術を利用し、新たなビジネスが続々と生まれています。今回は諸外国に比べIT化が遅れていると言われている日本で、萌芽が芽生え始めている「動画そして映像業界の新ビジネス」をデジタルの視点で紹介し、業界の需要喚起の可能性を探っていきます。



 

 



世界的なeスポーツの興隆

以前から注目を集めていた映像分野の筆頭格といえば、何といってもeスポーツです。話題のVR=「仮想現実」機器を使ったこの分野、始まった当初はスポーツの一つに数えることを異端視するムードが大半でしたが、すでに世界の競技人口は1億3000万人を超え、サッカー人口の半分以上に匹敵。アメリカ・ニューヨークで開催された世界大会では、16歳の少年が優勝し、3億2600万円の賞金を獲得。大変な話題になりました。再来年の中国・杭州のアジア選手権でもメダル種目として正式採用が決まっています。これを裏付けるように、eスポーツの国際市場規模は、3年前の650億円が、昨年は1100億円、そして再来年には1800億円に増大が見込まれていて、日本でも茨城国体で導入が始まるなど、もはや一大ビジネスに成長しつつあります。この動きはますます加速しています。F1オーストラリアGPの代わりとして、F1ドライバーと世界のトップゲーマーがオンライン上のアルバート・パーク・サーキットで対戦する「not the AUS GP」が開催。プラットフォームは、実際にF1に参戦している各チームの全面的な協力で作成されたF1公認ゲームの最新版「F1 2019」で、マクラーレンのランド・ノリスや元マクラーレン・ホンダのストフェル・バンドーンなどが参戦を表明。トップゲーマーとの夢の対戦が実現し、シーンを大いに盛り上げました。新たな映像ビジネスの典型といえるでしょう。

 

フェスやライブもオンライン配信が花盛り

ライブやサウンドフェスティバルの観劇形態も大きな変化をみせている一つです。特に、DVDやブルーレイ化の企画以外、ビデオカメラが縁遠かったライブハウスは、機材を揃え、配信対応可のステージが多くなりました。
エンタテインメント系のライブ配信は、主催者側の一策でしたが、今ではエンタメ業界の収入の柱として、期待されています。ライブ会場に入れる人数を制限し、会場に入れなかったファンには配信でしか味わえないマルチアングルやVRといった新しい楽しみ方を生み出し、提案しています。例えば配信されているオンラインフェスサイトへアクセスすると、そこはいくつもの建物できたフェス会場になっていて、有料コンテンツが観られるメインブースだけでなく、多彩なバラエティトークブースやアーティストのグッズ売り場など、オンライン上でリアルイベントさながらのフェスが体験できるようになってるものもありあます。それと都市部に住んでいるとなかなか実感できませんが、オンライン配信の充実は、集客面の不安から、ビッグネームのアーティストが開催を見送りがちだった地方のファンにとっても、朗報につながっています。これまでは最寄りの大都市へ何年かに一度、出かけ、チケット代の他にも、交通費や宿泊費込みで数万円という出費も珍しくありませんでしたが、オンライン配信の充実で、地方のファンにとっては、自宅で好きなアーティストのライブを楽しめるようになりましたし、アーティスト側にとっても、集客面での不安が軽減され、好都合の側面が大きくなっています。この他、すでに指摘されているように、学校の授業や各種セミナーといった分野もオンライン配信への対応が進んでいます。

 

バーチャル・ツアーもニーズ増大

新たに需要が広がったのが、オンラインでの旅行を楽しむ「バーチャル・ツアー」です。バーチャル・ツアーはパソコンやVR=「仮想現実機器」から360度撮影の動画を楽しむサービスで、従来の動画サイトに比べ、自在に視点を動かせる点が人気を集めています。展示物を見つめる角度までは変えられませんが、ズームを使えば、それなりの画質で細部を見ることができ、クリックすると詳細情報と展示物の拡大画像が見られるなど、利用者ファーストの仕組みになっています。パリのルーブル美術館、ローマのコロッセオ、中国の万里の長城など、世界的な観光地をはじめ、ラインアップは徐々に充実し始めていて、家に居ながらにして、観光地の風景を味わえたり、いずれ行きたい場所の「下見」ができたり、一定のニーズはあると予想されます。

 

T化の加速は「オンライン配信」「動画活用」がカギ

オンライン配信の技術は、地方と都市部の情報格差解消にも大いに期待されています。例えば、VRや5Gといったテクノロジーを駆使して、既存の遠隔診療の環境が改善すれば、これまで数時間かけて、都市部の病院へ通院していた高齢者にとっては大変な負担軽減でしょうし、先述のオンラインセミナーは、生涯教育の充実にも大いに役立つでしょう。最終的に国会をオンラインで開催する構想を抱いている大臣もいるようですが、例えば、選挙の投開票やその際の実況中継はもちろん、すでに解禁されている公示後の各候補の主張や、選挙管理委員会からのお知らせなどは、オンライン配信による効果が大いに期待できます。

これまで、オンライン配信の現状についてお伝えしてきましたが、これを実現するには、映像業界の力が不可欠です。オンライン配信に取り組むものの、画と音がずれていたり、場合によっては頻繁にフリーズしたりしているケースを見かけますが、これはプロが絡めば、大幅にリスクを軽減できます。それに、ひょっとしたら、これまでに挙げた例以外にも、意外なところで映像や動画業界のノウハウが活かせるかも知れません。それにはまず、動画の活用について、専門業者からアドバイスをもらうことです。日本のIT化の課題を動画の力で解決できれば、これほど素晴らしいことはありません。今後の日本のデジタル化を動画の活用が握っている…あながち大げさな表現ではなさそうです。

 

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人