テレビの面白さを左右する?!リサーチャーの仕事

テレビの面白さを左右する?!リサーチャーの仕事
2021年7月26日 ninefield

テレビ番組のスタッフロールを眺めていると、「リサーチ○○」というテロップが登場することがあります。ここで仕事をしているのが「リサーチャー」です。文字通り、番組制作上のネタを「リサーチ」する仕事で、特に情報番組やクイズ番組などは、リサーチャー次第で面白さが決まると言われるくらい重要な仕事です。大都市圏では職種として独立していますが、地方局では入社年次の若いディレクターが担当し、経験を積む場になっていることもあります。特にインタビューなどでは、期待通りの「撮れ高」が撮れない場合の予防策として、リサーチャーのリサーチが生命線を握るといっても過言ではありません。今回は制作サイドの「縁の下の力持ち」と言われるリサーチャーの仕事の全貌に迫りつつ、求められる人材像などを探っていきます。



 

 



リサーチャーとは?

リサーチャーの起源は、元々、放送作家や構成作家のアシスタントです。まだ、インターネットが無かった時代、放送作家の事務所では、新人や若手たちが、主に電話や書籍、雑誌といったメディアを使って、企画や構成の下調べをしていました。ネットが出現した現代でも、出演者やロケ地はもちろん、一般人で面白そうな人や、企画に合った店を探すプロセスは変わりません。歴史や紀行系の番組ならば、図書館や書店で資料を探すほか、必要な情報だけをまとめたり、博物館や専門家への事実確認をしたりと、まさに「本取材のお膳立て」をしていきます。
 

リサーチ業務の実際

プロデューサーやディレクターに比べて、地味な立ち位置のリサーチャーですが、所謂、ネタ探しやネタ選びなど、番組の事前取材を一手に引き受けます。リサーチで重要なのは「ネタ探し」と呼ばれる情報収集と「裏取り」と呼ばれる情報確認の2つです。ディレクターは、リサーチャーが調べた情報を基にロケへ赴き、どう映像化したら、視聴者へ訴求できるかを考えて、実際の取材を組み立てていきます。この時点で、事実関係の確認は殆どしません。言い換えれば、リサーチャーのリサーチスキル次第で、本取材の成否がかかってきます。

例えば、バラエティ番組のリサーチャーの場合、面白い人や店、場所を探すことが多くなります。ディレクターやプロデューサーからは、「こんなイメージの人」とか「こういう感じのネタで探して」といった漠然としたテーマしか与えられない場合もあり、自分で、想像力を働かせて自発的に動けることが求められます。企画のテーマを汲み取り、そのテーマに当てはまる面白い人はどんなところにいるのか?どんな生活をしているのか?趣味は?家族構成は?といった具合に想像力を働かせ、当てはまりそうな人がいそうな場所を実際に訪ねたりします。そこで意中の人材が見つかった場合、仕込みまで一気に仕上げます。

報道番組や情報番組ですと、近年はスタジオでパネル展開するコーナーも増えているので、パネル作成の際の情報を探したり、出来上がったパネルに間違いがないか確認したりという作業もあります。また、新聞各社の記事の比較や、事件・事故の情報整理、パネルに出す写真などを探すのもリサーチャーです。さらに、速報ニュースの発信元をあたったり、新聞や官庁のサイトから情報を収集したりするなど、オンエアに直結する役割を担っています。

「裏取り」の具体例を一つ挙げましょう。例えば “日本一の●●”と謳った商品を取り上げる場合は、何をもって日本一としているかという事を調べる必要が出てきます。さらに、世界の歴史や医療・経済など、多岐にわたる分野を網羅しつつ、国会図書館、大学教授、さらには特定分野のマニアへの取材まで、あらゆる手法を駆使し根拠を調べます。もし、根拠が曖昧な場合、番組考査部の事前チェックで不合格になり、取材のやり直しという最悪の結果を招きかねません。こうして候補に挙げたネタの正当性が確立できて、初めてディレクターにリサーチ結果を渡せます。
 

ネット取材も多いが…

インターネットが無かった時代は、図書館へ通って、関連する新聞記事や雑誌を探したり、外へ出て聞き込みをしたりするなど、所謂「足を使って」情報を集める手段がメインでした。この方法はインターネットの出現で劇的に変わりました。特に海外や地方など、実際に行くことができない場所のネタを探す場合は、ブログやツイッター、フェイスブックをフル活用して、取材交渉に漕ぎつけるケースが主流です。ただ、ネット情報を盲信するのは、時として齟齬を生みます。そこで重要になってくるのが、古典的ともいえる電話作戦です。旅行バラエティなら、ホームページ以外の要素を探るため、役場の観光課や地元の観光協会、それに商店街の会長へ電話をかけたりして、ネットには載っていない情報を探ります。そもそもこのご時世、ネットでの取材依頼に飽き飽きしている向きにとっては、生声での取材交渉にホッとするものです。そして、この電話取材で所謂、本取材への「仕込み」に一気につなげていきます。
 

リサーチャーに求められる素養

では、リサーチャーにはどんな素養が求められるのでしょうか。まず、重要なのは「調べる力と好奇心のある人」です。必要な情報にたどり着くまで、粘り続ける忍耐力や情報収集力です。そして、世間の流行などに常にアンテナを張れる好奇心旺盛なこともリサーチャーに必要な条件といえるでしょう。日常生活でも、ただ漠然と生活するのではなく、いつでもひらめきを持てる習慣を持つことが望ましいといえます。加えて、最近はグローバルな取材機会も増え、やはり語学に強いことも優位性の一つに数えられます。こうした素養を持ってこそ、文字通り「番組の生命線」を握る事前リサーチが可能になります。
 

会社ごとの得意分野と今後の展開

一口にリサーチ会社といっても、それぞれに得意分野があります。クイズ番組の「クイズと答え」をリサーチし、作成する会社、「●●選手権」といったコンテスト形式の番組で、その業界をけん引する人たちをリサーチし、仕込む会社、さらには、世界の秘境やガイドブックには載っていない独特な生活文化など、海外のリサーチを専門にする会社もあり、まさに番組の目的に応じて、様々なリサーチ会社や個人リサーチャーが存在します。

こうしたリサーチ会社、リサーチャーを使った取材は長らく在京局や在阪局など、大都市圏にあるテレビ局の専売特許でした。しかし、最近はネット保証料の漸減から、在京キー局からの配信に頼らない番組づくりで、生き残り策を模索する地方局が増えています。地方局の場合、これまでは予算が潤沢でないため、特に海外取材には、至って不慣れでした。ただ、今後、地方局の制作陣がリサーチ会社やリサーチャーを上手く使って、番組づくりをするノウハウを身につければ、グローバルな話題をローカルの視点で斬る番組が続々と誕生するでしょう。さらに地上波や衛星波のテレビだけでなく、動画投稿サイトを主軸にしたインターネットテレビでも、この傾向は強まるかもしれません。

となれば、リサーチャー業界は今まで以上に「マルチな活躍」が期待されているといえそうです。ともすれば、ネットだけのリサーチに陥りがちな中、手間を惜しまず、人や現場と向き合って、事前取材を続けていくリサーチャーこそが、次の世代に生き残っていくと言えるのではないでしょうか。
 

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 有明 雄介