映像制作での絵コンテの重要性

映像制作での絵コンテの重要性
2021年11月8日 ninefield

コ ビジネスの現場でもそうですが、文章だけの資料よりも、図やグラフ、時には動画などを使って、クライアントやスタッフに説明することは、理解度を深める上でとても有効です。映像制作の現場でも同様で、カメラマンや出演者などに企画意図を説明する際、いわば「設計図」として、使われるのが「絵コンテ」です。多分、視聴者の皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?特にCM制作の現場では必須のスキルといっていいでしょう。絵コンテに描かれた内容如何で、スタッフの理解度は格段に差が付き、いきおい作品の出来不出来に直結してきます。いわば生命線を握るといっても過言ではありません。今回は「絵コンテづくり」をテーマに、作品に及ぼす重要性を紐解いていきます。



 

 



絵コンテを描く理由

 先述したように「絵コンテ」とは、動画作成における設計図です。撮影者がどのような映像を作ろうとしているのか、第三者と共有するために描きます。担当するのは、基本的にディレクターや監督で、カメラマンやスイッチャーといった映像スタッフはもちろん、出演者、さらにはクライアントとさまざまな人が目を通します。換言すれば、絵コンテは第三者と情報を共有するだけでなく、自分の制作している台本が「イメージしているもの」と合致しているのか、頭の中のイメージを整理する役割を担っています。

 特に、CM制作の場合は絵コンテを作ることで、クライアントに説明がしやすくなります。「こういう映像を作ろうと思っています」という企画を提案する際に、文章だけではなかなか頭に入りません。その点、絵コンテがあれば、イメージが具体化し、社内の認識共有もスムーズに進むでしょう。このように、チームであるいはビジネスで映像制作をしようとする場合に、絵コンテ制作は欠かせない要素です。

 

絵コンテの良し悪しのポイント

さて、絵コンテを描くことになった場合、最初は良い作品や好きな作品を真似してところから始まると思います。しかし、回数を重ねる内に、頭の中のイラストをうまく表現できなかったり、スタッフへ意図がうまく伝わらなかったりして、行き詰ることも出てくるはずです。

 それでは、良い絵コンテのポイントとは一体、どこにあるのでしょうか。まず大切なのは「第三者に客観的な目線で構図を伝えているかどうか」です。端的に言えば、撮影スタッフがどう撮影すれば良いかイメージが沸かない絵コンテは及第点とは言えません。
つまり、しっかりした絵とか絵心の有無よりも、構図やどのような角度から撮影をしようとしているのか明確に示していれば、撮影スタッフもイメージしやすくなります。

 第三者への伝え方について、一通りブラッシュアップが終わったら、「ワイド」「パノラマ」「縦型」といった実際の映像と同じ縦横比のコマで、フォーマットを作ってみましょう。フォーマットを設定することで、絵コンテ作りを複数のスタッフに分担しても、スムーズなコミュニケーションが可能ですし、セリフとイラストが一致する絵コンテならば、第三者にも伝わりやすくなるでしょう。フォーマットが完成したら、頭の中の映像をイラストに起こします。カメラから映し出されるアングルを思い浮かべながら、イラストを仕上げましょう。

 このとき、絵が得意な人ならば、イメージした映像をイラストに書き起こすことで、情報の共有が可能ですが、絵が苦手という方は、イラストに書き起こしてもイメージの共有が難しく、場合によっては「何を撮影したいのかよく分からない」絵コンテになってしまう可能性があります。その場合は、絵や画像の説明を文章で書くことも一考でしょう。特にセリフやナレーションが決まっていれば、その部分を記入しておくと撮影のイメージがより伝わりやすくなり、絵での訴求のハンデを補うことができるようになります。
 
 それでもイラストでは伝わりにくいと感じている場合は、イメージしている構図に近い写真やイラストをネットから引っ張りだして活用することも立派なアイデアです。また、アップが多くないか、同じ角度が多くないか、さらにはストーリーに沿っているかといった全体のバランスを調整していくことも忘れないようにしましょう。

 

絵コンテの制作手順

絵コンテを実際に制作するには、被写体の向きや手の動き、さらには表情など、抽象的なイラストに情報を書き加えながら、自分の頭の中のイメージを共有することが大切です。
その上で、絵コンテを制作したら、必ずページ番号やカット番号を入力するようにしましょう。カット番号を入力しておくと、現場で撮影プランを変更する場合、どこを台本と違う構図で撮影するのか、情報共有がしやすくなります。さらには、全体を見比べながら客観的な視点からカットの入れ替えも可能になります。

 想定している時間を記入しておくことも大事な作業です。必要な秒数を撮影するだけでなく、編集者がこのカットにどの程度の時間が必要になるのか、判断しながら作業することが可能になります。これは撮影時よりも、むしろ編集の段階になって、効いてきます。

 全体のイメージを膨らませた上でイラストを制作することも伝わりやすい絵コンテを描く上で必須です。全体をイメージすることで、どのカットにどのようなイラストが必要になるのか、イメージできるようになります。1コマずつのイラストの質は良くても、全体で見返した時に、前半に情報を多く詰め込みすぎて、後半がスカスカになってしまっていることもあります。全体のバランスを整えることに心を砕いてこそ、視聴者が見やすい動画を制作する勘所といえます。

 この他にも、映像の縦横比と同じ比率で制作したり、シーンごとにイラストを切り替えたりすることも大切なテクニックです。そしてイラストが完成したら、全体のコマを見返すようにしましょう。できれば1日程度時間を空けてから見直すのがベターです。見直した時に、このイラストは何を意味しているのか?と分からない箇所があれば、絵コンテとして客観的に情報を伝えられていない可能性が高いといえます。絵コンテを制作する際は、全体を客観的に見返す時間も作るように心がけてください。

 また、意外に見落としがちなのが、1コマに対してのセリフ、ナレーションの分量です。頭の中でセリフ、ナレーションを読むのと声に出して読むのでは、同じように見えて、実際に声に出して読む方が、速度が遅いためです。1コマの想定秒数内で収まるセリフ、ナレーションなのか、事前にストップウォッチなどを使って確認した上で、絵コンテ作りを進めていきましょう。

 

第三者への相談も有効な選択肢

 ここまで、絵コンテの良し悪しと実際の制作手順を紐解いてきましたが、イメージ画像を選んだり、テロップの文字入れなどをしたりしようとすると、自分一人の場合、これでいいのか悩むことがあります。そういった場合はクリエイターや制作会社といった第三者の意見を求めることがオススメです。絵コンテを作成するノウハウはもちろん、実際の映像制作でも豊富な経験を基に、アイデアを提供できます。きっと、依頼主が満足できる作品に仕上がるでしょう。絵コンテづくりに限らず、動画制作に行き詰ったら、ぜひクリエイターや制作会社への相談をお勧めします。
 

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 北原 進也