映像制作には欠かせない「ロケハン」

映像制作には欠かせない「ロケハン」
2021年11月15日 ninefield

 「ロケハン」という言葉、ほとんどの方が一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし、具体的な意味や何をするのかと問われたら、説明できる人は多くないはずです。
そのロケハンでのチェックが、番組制作の成否を決めるとても重要なものになってきます。例えば、選挙事務所で各社が合同の映像取材をする場合、互いに干渉しないように、場所やワイヤレスマイクの調整、あるいは中継車への導線をロケハンに従って、打ち合わせる必要があります。今回は、ロケハンの目的や重要性はもちろん、どんなメリットがあるのか、そして満足のいく動画づくりに資するロケハンの在り方について、考えていきます。



 

 



ロケハンの目的と重要性

ロケハンとは、英語のlocation huntingを省略した呼び方です。つまりLocation(撮影する場所)を、予めhunting(探索)することで、撮影場所の下見と考えるとわかりやすいでしょう。ロケハンの最大の目的は、撮影のイメージに合う場所を探すことです。全く知らない場所で完成度の高い撮影をするのは、実はプロでもなかなかの難関です。ロケハンをすることで、撮影場所の雰囲気や情報を事前につかむことができます。撮影場所によっては必要な機材が変わったり、ベストな時間帯が限られていたりすることもあるでしょう。より完成度の高い撮影を行うために、ロケハンは欠かせません。

 もちろん、実際には単に撮影場所を確認するだけではなく、当日の動きを想定するための「下調べ」までが必須です。ただ見て終わりではなく、「本番の時間と場所」「出演者の立ち位置や顔の向き」さらにはメイクルームや荷物置き場の確保など、実際に当日の撮影風景を思い浮かべて、撮影がスムーズに進められるようにスケジュール立てて行きます。例えば、予算にあったスタジオか?屋外なら許可申請がおりるまでの時間や費用はどのくらいかかるのかといった点も考慮する要素になります。
 

ロケハンのメリット

では、ロケハンを行うことには、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?まず、強調しておきたいメリットとしては、イメージ通りの撮影ができる場所を事前に見つけておける点が挙げられます。撮影の際には「こんなイメージの撮影がしたい」という構想がまず、頭に浮かびます。スタジオやロケ地は、写真や映像を見ることでイメージを膨らませることができますが、実際に撮影場所に行ってみたら、抱いたイメージとずれていたということがよくあります。ロケハンをしておけば、イメージ通りの撮影ができる場所かどうかを予め確認できますし、同じスタジオやロケ地の中でも「この場所」「このアングル」といった点を把握しておけるのも、ロケハンのメリットの1つです。

 機材の必要・不要を明確にできることも大きいメリットです。スタジオやロケ地によっては、当日、実際に足を運んでみたら想定していた機材では足りない、想定していた機材が必要なかったといった過不足が往々にして発生します。その点、ロケハンを済ませておけば、実際に撮影するときに、どんな機材が必要になるのか、不要なのかを予め判断しておくことができるので、当日になって、機材が足りずに思い通りの撮影ができないという事態を防げますし、不要な機材をわざわざ運ぶ手間も省けます。
 

ロケハンのチェックポイント

 では、ロケハンをする際にチェックするポイントは、どこにあるのでしょうか?まず、機材面からいえば、電源はどこからとれるのか、といった初歩的な事に始まり、必要な道具類はどこに収納しておき、どういう動線で搬入や搬出を行なえば良いのかといった点が挙げられます。撮影面でいえば、自然光が入る撮影スタジオの場合、何時頃にどのような光が入るのかを知ることで、最も綺麗に撮影できる場所や時間帯が変わってきますから、どの場所でどのようなシーンを撮影すれば良いのかといった点も押さえておく必要があるでしょう。

 出演者やスタッフのケアもスムーズな撮影には欠かせない要素です。どのキャストにはどこで控えて貰えば良いのか、特に屋外撮影の場合、控室やメイクルームなどの確保は重要です。ロケ車になるのか、近くのホテルを借りられるのか、ホテルが無いような場合、飲食店や町内会の会館などに協力お願いできるのか、さらには近所に「仕出し対応」してくれる店はあるのかなど、出演者のモチベーションに直結するだけに、腐心する点は多々あります。

 こうして、細かくじっくりと撮影現場やその周辺を確認したら、ロケハンの時点で撮影する画角を予想し、写真を撮影。撮影した画像に人物などを重ねて絵コンテや写真コンテを制作していきます。こうしてロケハンに入る前までに、制作する映像の内容や目的、それにコンセプトをきちんと確認し、映像の利用目的などがブレないようにしっかりとまとめておきます。できれば、絵コンテの制作と並行して撮影場所を探しながら、ロケハンをしていくのが望ましいといえます。
 

ロケハン前の注意点

実際のロケハンに取り掛かる前に、事前に確認しておくポイントがいくつかあります。
まずは、どんな撮影を行ないたいのかということを明確化する必要があります。スタジオやロケ地を探してロケハンを行なおうと思っている段階であれば、すでに撮影したいものは決まっているでしょう。しかし、同じものを撮影するといっても、表現したいテイストの違いで、撮影場所は変わってきます。明るい雰囲気の撮影がしたいのか、落ち着いた雰囲気の撮影がしたいのかで、撮影場所の選び方は変わるでしょう。コンセプトや予算、立地が明確になれば、撮影場所の条件もはっきりしてきます。まずは基本的な事項を決めてから、撮影場所を探すようにしましょう。スタジオ検索サイトやロケ地検索サイトを利用すると、自分のイメージや使いやすさ、立地などに応じて絞り込んでいくことができます。

 ロケハンの条件を調べることもぬかりなく済ませましょう。例えば、スタジオを利用する場合、ロケハンを受け入れているかどうかは、撮影場所によって、異なります。「スタジオが空いている時間はいつでもOK」というところもあれば、時間が決められている場合、無料で行なえるところと料金がかかってしまうところがあり、確認が必要です。また、ロケハンできる最長時間や人数制限が設けられていることもありますので、事前にきちんと調べ、迷惑をかけないようにしておきましょう。さらに屋外や自然光を取り入れての撮影を想定しているのであれば、時間にも注意する必要があります。季節によっても暗くなるタイミングは変わりますので、ロケハンを実施するにあたって、撮影時と同じ時間帯に合わせられるよう意識しておくといいかも知れません。
 

プロへの相談も選択肢

ロケハンはプロと一般人でノウハウの差が出やすい作業です。スタジオを使うにしても、屋外でのロケにしても、企画から諸々の段取り、さらには撮影・編集に至るまで、一貫して、プロへ委託した方が、不慣れな作業に煩わされず、安心して動画制作を任せられると思います。何よりも経験が豊富ですし、万一、トラブルが起きても、リカバリーするノウハウも数多く持ち合わせています。また、スタジオを所有している制作会社の場合は、動画制作を一括発注するという点でも好都合です。「安心料」という意味も込め、ぜひプロへの相談をお勧めします。
 

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 笹木 尚人