テレビ局のキャラクター活用

テレビ局のキャラクター活用
2022年4月11日 ninefield

 テレビ局の「対外イメージの担い手」と言えば、アナウンサーを思い浮かべる人が多いと思いますが、最近は各局のマスコットキャラクターも活躍の場を拡げています。マスコットは古くから存在していて、番組宣伝やイベントなど様々な場面で「ゆるキャラ」的な役割で、活躍を目にした方も多いでしょう。今回は年々、その役割が大きくなってきている「テレビ局のキャラクター」について、起用が増えている理由や効果的な活用法などにスポットライトを当てます。



 

 



キャラクター活用のメリット

テレビ業界だけに限らず、企業のマーケティング活動では、キャラクターマーケティングの重要性が年々、高まっています。例えば、かわいいキャラクターがターゲットの目に留まると、その企業名や商品を知らなくても、SNSに載せてもらえるケースが現れます。
ですから、企業はターゲットの感性に訴えつつ、無視できない情報を訴求するためのオリジナルキャラクターを常に考えています。テレビ各局もキー局、ローカル局を問わず、マスコットキャラクターを擁していて、局の宣伝に一役買っているのはご案内の通りです。

 では、テレビ局がキャラクターを起用するのは一体、どんな目論見があるのでしょうか。まず、挙げられるのが「低予算で効率よくプロモーションできる」点です。開発費用を除けば、予算は殆どかかりませんし、特に放送局が「メシの種」にしている動画は、リッチな情報伝達が可能ですから、短時間で明確かつ効率的に訴求ポイントを伝えることができます。
例えば、記事などで文字や写真だけだと、情報の理解に時間がかかり、場合によってはポイントが伝わらずに離脱率が上がってしまう可能性が高まります。せっかくキャラクターを使ったプロモーションができるのに、視聴者には、商品の魅力が十分に伝わりません。
しかし、動画なら、画に躍動感が出ますし、情報を短時間に凝縮することも可能です。飽きの来ない動画配信は、効率の良いプロモーションの実現につながります。

加えて、認知拡大の効果が期待できることもアドバンテージです。テレビ番組への出演は言わずもがなですが、他にもストーリー性を持たせた短編アニメ、さらにはキャラクターの様子を収録して配信するだけという方法でも、認知は拡大するでしょう。

 そして、キャラクター起用の最大のメリットと言えるのが「イメージ悪化のリスクが少ない」点です。プロモーションというと、通常は芸能人やタレントを起用することが定番です。なぜなら、彼らが持つブランドや認知度のサポートを得ることで、商品の情報をスムーズかつ強力に発信することが可能だからです。しかし、これは、タレントが不祥事を起こした際には、ブーメランになって帰ってきます。一気に商品の売り上げが落ちたり、ブランドイメージが急降下してしまったりするリスクが拭えません。

 その点、キャラクターの起用ならば、そうした心配は皆無です。もちろん、キャラクターそのものが盗作だったといったスキャンダルは論外ですが、滅多なことがない限り、イメージの悪化は限りなくゼロに近いと言えます。もちろん、キャラクターの動画活用は、企業情報や金銭、さらには病気などに関するシリアスな内容へも踏み込んだ伝え方が可能になります。難しくて深刻な内容とは裏腹の親しみやすいキャラクターを起用することで、情報の受け手側に与える印象はグッと和らぐでしょう。ここにポップな動きや音を加えれば、ハードルは一層下がります。

SNSの出現で変わる活用法

 少し前までは、キャラクターは「ただ出しておけばいい」という考え方が主流でしたが、それだと、今は注目度が高まりません。なぜなら、ユーザーの認知と体験価値を高めるのがキャラクターブランディングの役割だからです。企業が商品性やメッセージ性に合わせて開発したオリジナルキャラクターを増やす中、キャラクターに「丸投げ」するのではなく、キャラクターが持つ世界観をはじめ、支持する世代にフィットするための動機づけとして活かされた時に、効果の発揮が見込めます。

 こうした傾向はSNSの発達でさらに顕著になっています。SNS運用はマーケティングに活用される場面が多いですが、そうした中でも、キャラクター自身が運用しているような見せ方が、効果につながることが多くなっています。キャラクター自身のSNSを展開しているケースはその最たるものでしょう。あらゆる場面でキャラクターが登場するようになっている中、SNSの活用は、「企業や商品」と「ユーザー」とのメッセージのやりとりを展開していく上で、必要不可欠になっています。

キャラクター活用の背景と放送業界の動き

 こうして各社がこぞってキャラクター人気に飛びつく背景には、キャラクターの持つ大衆性を活かして、より多くの人を引きつけようという戦略があります。見方を変えれば、ネットを中心としたクロスメディア展開が主流になり、マスで広告効果を得ることが難しくなってきているともいえるでしょう。
 
 キャラクターをうまく使うことで、新たな顧客の関心を引いたり、ターゲット世代に向けたメッセージを伝えたりすることができる可能性は大いにあります。キャラクターの強みは、クライアントが望む自由なコミュニケーションが可能なこと。つまり、企業や商品・サービスの一貫したシンボルにできますから、メディアが複雑多様化する今の時代にマッチしているといえるでしょう。それに呼応するかのように、テレビ業界でも、周辺権利のビジネスに力を入れています。オリジナルのキャラクターを番組ごとに活用したり、広告主の営業サポートに使えるキャラクターを作ったりするのはその好例といえます。さらにマスコットキャラクターを配信ビジネスなどに波及させて、二次収益を得ようとする動きも活発化しています。放送収入が伸び悩む中で、事業分野を核とした放送外収入の「一翼を担う」存在に成長してきていることは論を俟ちません。

問われる「戦略」の重要性

これは全てのキャラクター利用に言えることですが、中長期的かつ戦略的に企業コミュニケーションの手法を考えていく必要があります。実際、大ヒットしている「キャラクター」は、必ずしもすべてが本当に「ゆるい」わけではありません。中には狡猾を極める位、戦略的に考えられているキャラクターもいます。タレントやアニメキャラなどは、生活者の愛着や信頼の上に成り立っていますが、独自に作り出したキャラクターは、デビューの段階では白紙です。ですから、マーケティング的に魂を吹き込むためには、課題設定からデザイン開発、育成やメディアプランニングに至るまで、売り上げ向上に結び付けるための戦略の展望が求められてくるでしょう。とりわけ、放送外収入に頼る比重が高まるこれからのテレビ業界ではいわゆる「売れる」キャラクターを生み出す仕組みづくりが喫緊の課題の一つになりそうです。

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人