タクシーサイネージとは

タクシーサイネージとは
2022年9月26日 ninefield

タクシー広告といえば、以前は座席や窓に貼ってあるステッカーやパンフレットを指していましたが、現在では、動画を流す車両が増えています。主に後部座席に向けて設置された端末に表示される動画広告は「タクシーサイネージ」と呼ばれ、よりリッチなコンテンツ訴求が可能になります。コロナ禍でタクシー移動を選ぶ人も増え、需要はより大きくなっている「タクシーサイネージ」今回は、導入のメリットや制作のポイントなどについて、探っていきます。



 

 



タクシーサイネージを取り巻く環境

 「タクシーサイネージ」は、運転席や助手席の背もたれ部分にタブレット端末を装着し、その端末に動画広告を流せる広告形態です。最近のタブレット端末は広告だけでなく、決済端末として使える場合もあり、導入が進んでいます。社会のオンライン化という時代の流れが「タクシーサイネージ」の普及を後押ししているといっていいでしょう。

 加えて、新型コロナウィルス感染防止の観点から、移動手段としてのタクシー利用が増えていることも普及の追い風になっています。タクシー業界に関する調査によりますと「密を回避できる」「他人との接触を回避できる」という理由でタクシー利用する人は、都市部を中心に増えていて、コロナ禍前と比較すると、月3回以上10回以下のミドルユーザーが増加しています。さらに、他の交通広告と比べた場合、決裁権者や経営者の利用が圧倒的に多いのも特徴です。ある調査によりますと、タクシー利用者で最も多い職業は会社員で、会社経営者も合わせると乗車する職業全体の半数に達しています。

タクシーサイネージ導入のメリット

「タクシーサイネージ」は、従来のタクシー広告や、他の交通広告・屋外広告としてのデジタルサイネージに比べると、後発ゆえにサービスを提供している事業者は多くありません。しかし、先発サービスにはない「さまざまなメリット」があります。第一に挙がってくるのが、通勤や商用時など、仕事モードのいわば「ビジネスユース」の乗車が多いという優位性です。つまり、ビジネスの決裁者向けの訴求ができますから、タクシー広告はビジネスマンをターゲティングした「BtoB商材」の広告に向いているといえます。また、タクシーの利用者は、普段からタクシーを利用する傾向があるため、広告を何度も見る可能性があります。そのため、商品やサービス、企業名などを記憶してもらえるのもメリットです。さらに、YouTube広告とは異なり、動画を途中でスキップできませんから、一度に多くの情報を訴求することが可能です。
 つぎに時間と場所の関連で考えると、タクシーが走っているエリアや時間帯によって、細かいセグメントが可能になります。タクシーの乗車時間は平均18分。他の公共交通機関よりも短時間で目的地に到着するため、乗車中の時間を有効に活用しにくいですが、電車やバスのような大人数の共有スペースと違って個室に近いですし、車内が狭いということは、動画が目に入りやすい環境です。モニターも目の前60センチと近い位置にあり、至近距離で動画を流すことができますから、視認性が高い上、テキストのみの広告よりも記憶に残りやすくなります。もし乗客が会話や外の風景に集中していたとしても、無意識のうちに印象に残る可能性もあり、再び広告に接したときに、相乗効果につながる可能性が期待できます。商品の認知度向上にはうってつけでしょう。

 なお、タブレット端末によっては、広告表示だけでなく、走行距離や料金などのメーター情報も同じ画面に表示されるため、より注目を集めやすい仕組みになっています。さらに、自分が運転しているわけではなく、手が空いていますから、動画を見て、そのまま車内で、スマホなどを使って、検索してもらえる可能性が拡がります。問い合わせや商品購入といったコンバージョンにも寄与することは論を俟たないでしょう。

 ただ、コストではウェブサイトやアプリへのネット広告に比べると、費用が高めです。また、配信媒体によって、契約期間や台数などに縛りがあり、短期間でもまとまった金額になります。特に「タクシーサイネージ」は、乗車してから1本目に流れる広告が最も視聴されやすいため、1本目再生プランだと、非常に高額です。ですから、費用をできるだけ抑えたい場合は、2本目以降に流れるプランなど、配信の時期や時間を限定する必要が出てきます。それでも、テレビや新聞などのマス媒体と比べれば、広告費用は安く、商材によっては広告予算を有効に使えます。広告出稿を検討している企業が増えているのも「むべなるかな」でしょう。

タクシーサイネージ制作のポイント

  では、「タクシーサイネージ」の制作で、気を付けるべき点はどんなところでしょうか。まず、サイネージ用の広告動画を制作する際は、タクシー広告の特徴やターゲットを意識し、シナリオや演出を徹底することが大切です。先述の通り、タクシー利用者は、経営者やマネジメント層、富裕層が多いので、利用者に合わせた商材を選び、広告の内容を検討しましょう。

 タクシーサイネージでは、複数の広告が続けて提供されるため、品質の高い動画で視聴者の印象に残る必要があります。例えば、タクシーを頻繁に利用する層は、同じ広告を何度も目にする可能性が高く、配信メニューの多くは30秒もしくは60秒となっています。したがって、飽きさせない工夫をしながら、最大秒数に合わせた動画制作が必要です。実写ならストーリー性を持たせたドラマ形式にしたり、アニメーションや静止画の組み合わせなら、大きくテロップを入れたり、効果音を多めに入れたりすることも有効です。
 
 「タクシーサイネージ」を見るターゲットが抱える課題を明確化することもポイントの一つです。日常的にタクシーに乗る習慣があるのは、比較的富裕層ですから、一般的な広告にありがちな「安い」という訴求はあまり効果がありません。つまり、ターゲットの課題はお金ではなく、時間や手間に対してあると考えられます。こうした背景を考慮すると、商品やサービスによっては「安い」ではなく「短時間」や「手軽」といった訴求の方が有効な場合もあります。

 以上の点を踏まえると、「タクシーサイネージ」に流す広告を制作する場合は、ターゲットに合わせて「商材やサービスを使うことで、どのようなメリットがあるか」「同業他社と如何に差別化しているか」「ターゲットは商材やサービスを使うことで課題を解決できるのか」といったポイントで制作することが肝要です。タクシー利用者という点で、すでにターゲティングされていますから、その中でさらに課題を明確化し、しっかりと自社の顧客情報を集めて、ターゲット像を絞ってから対策を練ることが、広告効果を高める必要十分条件といえるでしょう。

 交通広告のあり方が変わる中、利用者に支持されているタクシーは、強い影響力が期待できます。また、最近では顔認証などの技術も進み、乗客の中でも狙ったターゲットにセグメントして、広告を訴求できるようになっています。「法人営業に課題を抱えている」「経営層に効果的にアプローチできない」といった悩みがある場合はもちろん、「新たなマーケティング展開」をお考えの企業も、ぜひ、「タクシーサイネージ」の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 北原 進也