ブレーンとしての放送作家

ブレーンとしての放送作家
2022年10月31日 ninefield

  テレビを観ていると、番組のエンドロールに「構成」というテロップを見かけます。いわば「番組の台本作成」のことで、この役割を担うのが、「放送作家」や「構成作家」です。情報番組やバラエティ番組で扱う企画そのものを提案したり、場合によってはリサーチまで務めたりします。決して目立つ仕事ではなく、一般の視聴者にも馴染みが薄いかも知れませんが、番組の生みの親であり、企画の良し悪しを決定づける大切な仕事です。今回はそんな放送作家について、仕事内容や活躍シーンはもちろん、どのような資質が求められるかなどを、探っていきます。



 

 



放送作家の「役割」と「仕事の流れ」

 先述の通り、放送作家の分掌範囲は、テレビやラジオ番組の構成に始まり、企画の立案や情報のリサーチ、そして台本作成に至るまで、幅広です。ドキュメンタリーやバラエティ、さらには音楽番組と、端的に言えば報道とドラマ以外、すべてのジャンルが該当します。特にバラエティ番組は多くて10人を超える放送作家を抱えている場合もあります。

 放送作家の具体的な仕事の流れとしては、まず、プロデューサーやディレクターなどとアイデアを出しあいながら、番組の企画案を考えていきます。そして、会議で決まったことを企画書にまとめます。この時、往々にして、各スタッフの意見がまとまらず、アイデアが煮詰まるものですが、放送作家が過去の番組づくりのノウハウや、視聴者が求めていることを的確に発言することで、ディレクターなどの番組スタッフにとっては非常に頼もしい存在になります。いわば「ブレーン役」といえるでしょう。

 引き続いて、番組の台本執筆に入りますが、台本と言ってもドラマなどのストーリーを書くわけではなく、あくまで既に大枠ができている中で台本を考えて仕上げます。具体的には、番組全体の構成や出演者が話すセリフ、場面の設定、ナレーションなどを考え、書き込んでいきます。そして書きあがった台本を基にスタッフと打ちあわせを重ね、実際の番組の形を作っていきます。

 収録に立ち会うのも放送作家の重要な仕事です。ほとんどの場合、放送作家は収録に同行し、現場にも立ち会います。途中で指示を出したり、細かな修正案を提案したりして、その番組がより良いものになるよう、初めから最後まで目配りします。

放送作家への道

 さて、放送作家になるには特に決まったルートはありません。現在、活躍している放送作家の経歴もさまざまです。脚本家や芸人など、同じ業界内で転身する人や、すでに活躍している放送作家に弟子入りする人もいて、規則や資格に縛られることなく、自分なりの方法で目指すことが可能です。最近は、現役の放送作家が講師を務める養成スクールに通い、優秀な成績を収めて放送作家デビューしたり、授業などを通じて関係を築き、仕事を紹介してもらったりするケースもあります。スクールに通うメリットは、授業や実習などで学んだアイデアの出し方をはじめ、台本制作のノウハウなど知識や経験をそのまま現場で生かせる点です。当然、台本書きのスキルや構成力が高く、即戦力として期待されます。

 一方で、スクールには通わず、ベテランの放送作家が立ち上げた事務所で経験を積むケースもあります。助手からのスタートですが、リサーチや番組宛てに送られてくるはがきの選定など、下積み仕事をこなしていく中で、才能や努力を見せることができれば、徐々に放送作家の仕事を任されることもあります。この他にも、ラジオ番組などにネタを投稿する“はがき職人”からピックアップされ、その番組の放送作家として招かれたり、放送作家の事務所入りを勧められたりするケースもありますし、最近は求人サイトに応募要項が掲載される場合も増えてきました。

放送作家の必須条件と労働環境改善の必要性

 では、どんな人が放送作家に向いているのでしょうか。言うまでもなく、テレビやラジオは人を楽しませたり、役に立ったりするコンテンツを作ることが役目です。そのため、人を楽しませることが好きだったり、自身のアイデアを世の中に発信していきたかったりする人は放送作家の適性があります。このことを前提に、放送作家の必須条件を探ると、まず挙がってくるのが「視聴者やリスナーの興味を引きつける企画力」です。さらにはプロデューサーやディレクターを納得させるコミュニケーション力、その企画を台本の中に落とし込む文章力なども求められるといえるでしょう。また、経験の浅い内は「リサーチ」と呼ばれる情報収集がメインの仕事になりますが、ここで培われた知識は、血肉となり、その後の放送作家として番組作りのアイデアにつながります。

 ただ、この業界は売れっ子ほど忙しくなります。リサーチの仕事に加え、どんどん担当番組が増えると、相応の体力がない限り、長続きしません。加えて、常に制作スタッフからの厳しい催促や変更などのプレッシャーもありますし、なかなか評価に結びつかず、落ち込みが続いたり、多忙がたたって、疲弊してしまったりする人もいて、精神力も問われてきます。
 
 例えば、放送作家は、資料読みやロケハンに始まり、会議や打ち合わせ、さらには、収録、生放送、ロケなどをこなしながら、番組用の台本やナレーション原稿を執筆し、その合間にも新企画の提案書といった作業をこなしています。当然、限られたスケジュールの中、同時進行でいくつもの案件が動いていますから、食事や睡眠などの時間が思うように取れないことも珍しくありません。

 「良いコンテンツを視聴者やリスナーに届けたい」という思いから、「仕事が趣味」といえるほど、大きなやりがいを感じられるのは、確かに放送作家の魅力の一つではありますが、反面、やりがいを感じている人が多いからこそ、休む時間が疎かになり、オン・オフの切り替えがうまくいかず、精神的・肉体的に追い込まれるケースも少なくありません。

 加えて、事務所所属、フリーランスを問わず、放送作家の世界は、雇用や収入が安定していません。もちろん、人気があれば各放送局から引っ張りだこになりますし、実際に50代、60代になっても現役で活躍を続けている放送作家も存在します。しかしながら、世間の反応が悪ければ番組を続けていくことはできませんし、必勝法というものもありませんから、再現性は低いです。そのため、番組が突然、打ち切りになってしまうこともあります。終身雇用が保証されていないので、個人の努力に因るところが大きいといえます。

 とはいえ、先述の通り、自分が生み出した番組が多くの人に届くのは、放送作家ならではの大きなやりがいです。昨今では、インターネット動画配信番組など、テレビやラジオ以外の活躍の場も拡がってきました。また、放送作家というと、かつては裏方的存在でしたが、最近は複数の人気番組を抱えるような「売れっ子作家」がテレビ番組に出演したり、イベントを立ち上げたり、さらには本を出版したりと多方面で活躍し始めています。「どれだけ人の心を動かせる番組が作れるか」ということが原点なのはもちろんですが、SNSなどのツールを有効に活用し、新しい形の放送が可能になる中、「新たな技術をいかに取り込んでいくか」の視点も、これからの放送作家には求められるでしょう。

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 村松 敬太