テレビCMが手ごろになっている!?

テレビCMが手ごろになっている!?
2022年8月15日 ninefield

 インターネットが広く普及し、動画サイトやスマートフォンなど、宣伝媒体が増えたことで、テレビCMが価格面で手ごろになっています。インターネットが普及した現在でも、数多のテレビ視聴者を抱える中、CMの制作費用を抑えられるようになったことは広告出稿の大きなチャンスといえるでしょう。テレビCMは、1回の放映時間は短いですが、伝えたいことがわかりやすくまとめられていますし、出稿形態によっては短期間に何度も目にしますから、印象に残りやすくなります。今回はテレビCMの仕組みやとりまく現状にスポットを当てていきます。



 

 



「タイムCM」の概要

 テレビCMには大別して2つのタイプがあります。はじめは「タイムCM」です。タイムCMとは広告主=スポンサーが特定の番組を提供し、その番組に設定されるCM枠の中で放送する広告を指します。具体的には、番組本編の前後に「ご覧のスポンサーの提供でお送りします」もしくは「しました」といったアナウンスを耳にしたことがあると思いますが、これこそが番組を提供していることのシンボルと言えます。

 ちなみにテレビ草創期はもう一つのタイプである「スポットCM」というセールス形態がなかったため、CMは全て「タイムCM」でした。セールスの最小単位は30秒で、週1回放送のレギュラー番組だと、契約期間は「2クール」つまり半年間が基本とされています。しかし、ローカルエリアの場合は、15秒や10秒といった秒数だったり、期間も1クール=3ヶ月だけだったりと様々な契約形態があります。

 番組を提供することで生まれるメリットも様々です。まず、特定時間帯のCM枠を買うことができますから、目的とするターゲットへ効率よくアプローチできることは魅力でしょう。加えて、番組のイメージと企業や商品のイメージをリンクさせることで、ブランディング効果が期待できます。他にも、最低30秒と比較的長尺のCMスペースも利用できまずし、社内や系列企業といったインサイドへのPR効果も優位性が高いといえます。
 
 テレビCMには、局ごとに一応、放送料金表が設定されています。しかし、実際は「条件次第」で価格が変動することが多く、定価を基準にする新聞や雑誌の広告などとは性質を異にします。具体的には視聴率をはじめ、番組内容や訴求したいターゲット、さらには全国ネットかローカルかといった放送エリアの広狭や提供企業の数に至るまで、様々な要素が絡みます。
 
 番組の人気にもよりますが、例えば、電波料が30秒提供で月額3000万円の場合、半年間だと1億8000万円になります。これにCMの制作費が加わりますから、如何に莫大な金額が動いているかが実感できます。また、「前提」「後提」といった提供クレジットの場合、提供金額によっては、提供アナウンスの順番や、スポンサー名にキャッチコピーをつけるなど、優遇される場合もあります。

局の稼ぎ頭「スポットCM」

 この「タイムCM」に対し、高度成長期以降、急速に勢力を拡大してきたのが「スポットCM」です。「スポットCM」とは、番組に関係なく、テレビ局が定める時間に挿入されるCM枠のことです。セールスの最小単位は15秒で、放送期間は自由に設定できます。もっとも、地方局の場合、年賀や企画スポットなどで、10秒CMを設定しているところもあります。

 実は草創期のテレビは、フィルムの架け替えや回線の切り替えに時間がかかっていたため、番組と番組の合間には、局の名称などを静止画で流していました。この時間帯を「SB:ステーションブレイク(ステブレ)」と呼びます。その後、技術の進化でステブレが有効活用できるようになると、「売り場面積」に悩む局としては利用法を探ることになり、「スポットCM」が誕生しました。また、最近はステブレ枠以外にも、タイムCMの枠にスポットCMを挿入する番組もあり、その場合は「PT:Participating commercial(ピーティー)」枠と分類されます。

 「スポットCM」は「タイムCM」とは違って、番組を指定することはできない代わりに、期間や予算配分を設定することが可能です。このため、キャンペーン期間中のみCMを放送したり、様々な時間帯にCMを放送したりすることができ、多くのターゲットに視聴してもらえることがメリットです。換言すれば「半年単位」で縛られる「タイムCM」に比べ、機動的な広告展開が可能ともいえます。

 もちろん、複数局にまたがってCMを流せば、幅広いターゲットに訴求できますが、最近はCM出稿を1局に絞ることで、料金設定を安くしたり、パブリシティなどの展開を期待したりするスポンサーも現れています。

 このように各局とも、企業や商品の特性に合わせて、より効果的なCMを放送することに工夫を凝らした結果、現在ではスポットCMへの出稿額はタイムCMを上回り、局の稼ぎ頭になっています。

「視聴率」にこだわる理由

 スポットCMを出稿する場合、視聴率は重要な指標です。広告主がスポットCMを発注する際に基準とするのがGRP(世帯延べ視聴率)です。各局は1GRPすなわち視聴率1%を稼ぐためにいくらという料金設定をしていますが、この設定を一般に「パーコスト」と呼んでいます。例えば「視聴者の7割が3度以上CMに接触する」とされる1000GRPのスポットを発注する場合、パーコストが30万ならば、30万×1000で合計3億円が必要になります。
 これを実際の発注に当てはめると、例えば、平均視聴率が10%のAテレビと20%のB放送が競合する場合、Aテレビが1000GRPを達成するには、100本のCM投下が必要ですが、B放送ならば半分の50本で済みます。パーコストを30万とすれば、Aは100本で3億に対し、Bは50本で3億を稼げる計算になり、経営効率はB放送に軍配が上がります。1日の放送時間は24時間しかありませんから、視聴率が高いほど、広告収入は効率化し、放送局の利益も増えていきます。これが民放各社が視聴率競争に血道を上げる大きな理由です。

テレビCMは本当に手ごろか?

そもそもスポンサーは自社の製品やサービスを告知するためにCMを出稿しています。ですから、コストパフォーマンスに優れた、より価値の高いメディアを選ぶのは当然です。かつてのテレビは、このコストパフォーマンスの優秀さを「対スポンサーへのセールスポイント」にしていました。しかし、視聴者のCMスキップに加え、インターネットという強敵が成長し、2019年にはついに広告費の王座を明け渡すことになります。コロナ禍を挟み、直近の2021年もネット広告は堅調を続けています。

 広告媒体としてのインターネットがここまで成長した背景には、テレビに比べて、「仕組みが透明化されている」ことが要因として挙げられます。例えば「成果報酬型広告」や「検索連動型広告」は、広告効果のリアルタイム化やターゲットの明確化という点で、テレビ広告の追随を許しません。テレビの視聴率も世帯視聴率から個人視聴率へと移り変わり、ターゲットの含有率が相対的に高い枠を見つけ出そうとしています。テレビとインターネットが連動しているCMを制作しているスポンサーもいます。有料無料を問わず、動画配信サービスの進出も相次ぐなど、放送業界の競争環境が激変を続ける中、ピンチをチャンスへの「奇貨」と変えられるか。テレビマンたちの奮起が問われています。

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 北原 進也