ナレーション原稿のコツ

ナレーション原稿のコツ
2022年6月20日 ninefield

よくできた番組ほど時間が短く感じられるのは、映像とナレーションが絶妙なバランスで成立しているからだと言われます。映像では表せない情報をナレーションで補う場合もありますし、逆にナレーションだけでは抽象的すぎる事柄を映像が直感的に表現する場合もあります。評価の高い番組はこの2つが絶妙な呼吸で進行しています。確かにナレーションを入れれば、手間もコストもかかりますし、ナレーションがなくても映像が成立する場合もありますが、その一方で、絶妙なナレーションが映像の魅力を大きく引き出す場合もあります。中には「ナレーションのコメントづくりを極めることは番組を極めることと同じ」と言い切る関係者すらいます。

 こうした事情から、映像制作をする中で、ナレーションを入れるかどうかは迷うポイントの1つと言っていいでしょう。今回は番組におけるナレーションの効能や作成する際のコツについて、紐解いていきます。



 

 



あくまで脇役のナレーション

映像作品の場合、あくまで主役は映像ですから、コメントは基本、脇役です。主役の映像を引き立てることは許されても、的外れのコメントは許されません。気を付けるべきポイントは二つあります。一つは「映像を見てわかることは、コメントしない」そしてもう一つは
「被写体の気持ちを、勝手にコメントしない」ということです。例えば、生き別れの親子が再会を果たす映像に「親子ともども感涙にむせんでいます」とか「大いに感激しています」というナレーションをつけるのは無粋の極みです。なぜなら、情報としては正確でも、視聴者にとってはこのコメントは余計だと感じてしまうからです。では、効果的なナレーションコメントを仕上げるには、どんなポイントに注意したらよいのでしょうか?

放送メディアは聴覚訴求が最優先

メディアを視覚型と聴覚型で分ける場合、テレビ・ラジオを問わず、放送は聴覚型のメディアと言えます。動画も該当します。対して新聞と出版は視覚型のメディアです。当然、「目で読む」原稿と、「耳で聞く」ナレーション用原稿は、同じでいいはずがありません。
 
 視覚型メディアは「黙読するための文章」聴覚型メディアは「音読するための文章」ですから、その書き方は大いに異なります。もちろん、ナレーション原稿は「音読するための文章」ですから「聞く側にとって分かりやすい文章」であることが大前提です。例えば、耳で聞くと難解な漢字や、同じ読み方でも複数の意味を持つ単語(同音異義語)はたくさんあります。聞いていて分かりづらいものが多いですから、出来るだけ、簡単な言葉に言い換えましょう。

わかりやすいナレーションの要諦

 ナレーション原稿を書く時はできるだけ無駄な言葉をなくし、シンプルな文章にすることが原則です。内容を詳しく伝えようとするほど、文章は長くなりがちですし、その分、要点も増えるので、伝わりづらくなります。ひとつひとつの文はなるだけ短くするなど、可能な限り簡潔な文章を心がけましょう。
 
 ナレーションは音ですから、耳に心地良く入ってくる言葉になっているかも重要なチェックポイントです。実際に読んだときのリズムや語感などにも気を配りながら、何度も読みあげてみましょう。
 
 実際にナレーターが原稿を読む場合は、聞き取りやすいように話しますので、抑揚をつけたり、間をとったりします。ディレクターが下読みする場合は、実際のナレーションのスピードを意識しながら、「読み上げチェック」をしていきましょう。この時に、映像と尺が合っているかを確認しておくと、収録本番の際にスムーズに運びます。
 
 できあがった原稿を複数の人に確認してもらうことも効果的です。ナレーションを聞く側になれば、自分が原稿を読んだときに感じなかった違和感に気が付く場合もあるでしょう。違う観点から原稿の内容を確認できたり、新しい言葉の表現方法を見つけたり、より良いナレーションの原稿作りにつながります。
 
 聴覚メディアの場合、その場では「聞き返しができない」という短所があります。ナレーションを聞いたとき、すぐに理解してもらうため、先述の「同音異義語」は出来るだけ避け、別の言葉に置き換える工夫が必要です。
 
 意外に多用してしまうのが、「あれ」「それ」などの指示語です。これは音声で聞いた際に聞き取りづらく、何の話をしているのかが分かりにくくなりますから、より「伝わりやすい文章」を丁寧に書いていきましょう。どうしても漢字が多くなりそうな場合は、一度文章を書き終えた後、改めて漢字の部分だけ見直してみると良いでしょう。

 ナレーションが固まったら、映像と合わせてみて、必要に応じてテロップを加えるのも視聴者の理解を深める上で重要です。近年は視聴環境が、駅や街中など騒がしい場所だったりして、音を出さずに視聴する可能性もあります。その上で、ナレーションなしでも内容がわかる「つくり」も求められています。

 ゴールデンタイムの番組などでは構成作家などが付いているので、書いてもらった原稿を直すことになりますが、予算の都合上、制作担当者自身がナレーションの原稿を書く番組もあります。自分で書くことには思った以上のエネルギーを使いますから、追い込まれないためには、構成段階から何をどう書くのかイメージを膨らませておくことが大切です。

ノーナレは主流になり得るか

 これまでご紹介してきたように、ナレーション制作にはさまざまなテクニックがありますが、近年、「ナレーションをあえてやめてみる」つまりコメントを極力封じて、撮影された映像と構成力だけで勝負しようという「ノーナレーション」が増えてきています。民放キー局のゴールデンタイムでは皆無ですが、一部のローカル放送では、ドキュメンタリーを中心に、こうした制作手法の番組を見る機会が最近、増えています。
 
 こうした番組を観て、実感させられるのは、ナレーションがない番組は伝えられる情報量が多くなる代わりに、視聴者自身が考えることを余儀なくさせるという特徴です。つまり視聴者の負担が増えますから、娯楽を求める視聴者にとっては、敬遠しがちになります。視聴率に縛られる民放テレビ局としては、扱いづらい番組といえ、これがなかなかドキュメンタリー以外のジャンルに拡がらない要因かもしれません。作品作りとは、いかに効果的に観客に情報を受け取ってもらうかであり、そのために作り手は様々な手段を用意して観客の反応を見極めなければなりませんが、いくらナレーションが必要条件ではないといっても、一切ナレーションなしで進める番組は、局にとってはリスキーと言えるでしょう。

積み上げてきた経験をコメントづくりに活かす

ディレクターなら誰しも経験済みですが、映像が繋がり、話の流れもできているのに「書くべきコメントが頭に浮かばない」「浮かんでいても適切な言葉が出てこない」ということが多々あります。解決の特効薬は?と聞かれても、それは日々の積み重ねとしか答えようがありません。小さな言い回し一つですら、自分が積み上げてきた経験の中からでしか使えるものにはならないからです。どんな手法を適切に使うか…。こうした選択作業こそ、ナレーション原稿をつくる上での醍醐味と言えるかもしれません。

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 北原 進也

 

 

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2022年6月13日 ninefield

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プロデューサー 笹木 尚人
プロデューサー 松野 一人
ディレクター 有明 雄介
ディレクター 林 要
ディレクター 村松 敬太
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