テレビを面白くさせるテロップと効果音の役割

テレビを面白くさせるテロップと効果音の役割
2020年8月24日 ninefield

こんにちのテレビ番組にとって、もはや欠かせないものが、テロップや効果音といった分野です。在京キー局だと、テロップには専門の担当者がいて、1時間当たり、百枚近いテロップ原稿が飛び交う番組もあります。また効果音も「音効さん」(音響効果の略)と呼ばれる専門の業者がいて、それぞれ番組に合わせて選曲したり、サウンドエフェクトに使えるような素材を選んだりして、整音作業へとつなげています。撮影が映像作品における「花形」なら、テロップや効果音は、主役を引き立てる「名脇役」と言えるでしょう。タイトルコールなどは、音声と効果音が組み合わさって。記憶に残りやすかったりします。今回はともに「バイプレーヤー」として、映像を引き立てる「テロップ」と「効果音」について、のぞいてみましょう。



 

 



テロップの役割

テロップは「テレビジョン・オペーク・プロジェクター」という送信装置の略語です。
テロップの役割の一つは、映像のデメリットを補うことです。映像は新聞や本などの活字メディアと違い、一過性のため、出演者のコメントや説明などの音声は耳で聞き取るしかありません。そんな場合、テロップを付ければ。たとえ音声を聞き逃しても、文字でその内容が確認できます。また、文字情報で確認することは、大切なコメントや内容が記憶に残りやすくなるという効果もあります。この他にも、映像や音声による説明だけでは十分に情報が伝えきれなかったり、時間が足りなかったりしたとき、テロップで情報をプラスできれば、視聴者の理解は、より深まります。

演出という点で、視聴者の皆さんが思い浮かべるのは、映像の雰囲気を華やかにできることでしょう。バラエティ番組やニュースワイドのVTR部分では、カラフルな色やポップな字体で視聴者の目を引き付けます。たとえばバラエティ番組で、芸人の鋭い突っ込みや、面白いボケなどを大きな文字でテンポ良く表示したり、コーナーのタイトルをポップな文字で表示したりすることで、映像の面白さや素晴らしさを大きくアシストします。

また、健康な人は往々に忘れがちですが、テロップは、聴覚にハンデがある人にも情報をわかりやすくできるという効果があります。映像だけではわかりにくい状況説明や、ポイントになるコメント、ニュースの要点などをテロップにすれば、耳が不自由な人の理解度は格段に上がります。また、出演者が言い間違えた言葉もテロップで正しく補足してあげれば、視聴者に誤った情報が伝わるのを防げます。

いち早く重要な情報を伝えたいときにも、テロップは活躍します。番組中でも急に流れる、緊急地震速報や各種の警報はもちろん、事件・事故の速報や選挙の当確情報などのテロップは、視聴者が今見ている番組から目を離してでも見てほしい重要な情報を伝えるときに
大事な役割を果たしています。

なお、テロップと似た意味で用いられる言葉が、「字幕スーパー」です。スーパーは英語の「スーパーインポーズ」から来た言葉で、背景の画像に文字を「重ねて」表示する技法のことです。テレビや映画などの映像の下部やサイドに表示される文字や字幕などのことを指して、スーパーと呼びます。「テロップ」「スーパー」どちらとも、背景の画像に重ね合わせて映し出される文字などのことを指すので、視聴者から見れば同じですが、スーパーは「重ねる」技法から派生した言葉、テロップは装置から派生した言葉といえます。

 

効果音の役割

主役の「映像」が引き立つには,テロップと並んで、脇役を務める「音」がうまく機能しないとダメなことは言を俟たないでしょう。登場人物の足音や自動車の走行音のように,映像で表現されている対象の音だけではなく、各種の効果音や音楽の使用が,映像の効果を高めています。効果音が,皆無の状態で、映画やテレビ・ドラマを観ても、その面白さは,半減どころか皆無と言っていいでしょう。効果音や音楽は,テレビ・ドラマや映画などにおいて、場面を強調したり,登場人物の気持ちを表したり,場面のムードを伝えたりと,各種の演出効果を担っています。ある放送関係者は、映像が多少、ぶれていても、クレームはあまり来ないが、音は少し、途切れただけで、たくさん電話が鳴ると音の重要性を説いています。ただし,どんな効果音,音楽でもいいから,映像に組み合わせればいいというものではありません。テロップ同様、センスよく組み合わされた音は,映像作品をより印象的なものに変えますが,組み合わせを誤ったり、のべつまくなしに、入れまくったりすると作品は台なしです。

一口に効果音といっても、「劇伴」と呼ばれる劇中音楽から、寄せては返す波の音、乾杯のグラスが触れあう音、時代劇の劇中、刀で切られる音まで様々です。
音響効果の仕事は、まずは映像をじっくりと見てから、合いそうな効果音を考えることから始まります。事務所に常備されている膨大な数の音源の中から、そのイメージにピッタリな音を見つけ、映像にのせていきます。素材にいいものがなければ、新しく作り出したりもします。報道やワイドショーの場合は、ディレクターが書く原稿をFAXで受け取り、選曲後、音楽の使用箇所を加筆した原稿と曲が入ったファイルを返送します。
ただし、テロップ同様、効果音単体が悪目立ちしてはいけません。あくまで映像と一体化し、自然に聞こえることが第一です。

効果音の活躍の場は、ドラマやバラエティだけではなく、報道やワイドショーといった番組にも広がっています。代表的なのは速報です。チャイムの効果音が鳴れば、仮に視聴者が「ながら」で視聴していても、すぐに意識を向けさせることができます。当然、テロップとセットで、活躍するケースが多く、放送局が報道機関たる大事な証の一つになっています。

 

テロップのセンスは、現代テレビマンの必須条件

これまで見てきたように、テロップ、効果音ともに、現代では映像作品を支える上で、必要不可欠な存在です。ところが信じられないかも知れませんが、僅か20年ほど前の現場では「字幕や効果音を使わなくても、観ている人に伝わるような作品でなければ一人前とは言えない」という教えが生きていて、頑なに信じているカメラマンやディレクターも珍しくありませんでした。今でも、古い世代には字幕や効果音の氾濫を批判的に捉える放送マンもいます。彼らの考え方も確かに一理ありますが、忘れていけないのは、多くの人に見てもらってこそ、映像作品には命が吹き込まれるということです。テロップや効果音が作品に対しての視聴者理解を深める手助けになるなら、可能な限り、心を配るべきでしょう。事実、テレビはもちろん、YOUTUBEなどの動画投稿サイトでも、字幕や効果音なしの作品にお目にかかることはまず、ありません。報道やワイドショーの場合、テロップ、効果音ともに、編集作業の過程で発注するケースも多く、作品の最終的な完成形を想定しながらの作業になります。効果音の場合は、音効さんに負うところも大きいですが、テロップは「文字通り」ディレクターのセンスが問われます。
どこでどんなテロップを入れたら、視聴者が分かりやすくなるか。そして面白く感じてもらえるか。それは報道でもドラマでもバラエティでも、ジャンルを問わないと思います。ディレクターにとって、もっとも必要なことは、視聴者への「愛」なのかも知れません。

 

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 林 要