プロが選ぶ一眼レフカメラ

プロが選ぶ一眼レフカメラ
2020年9月7日 ninefield

最近、YouTubeなどの動画投稿サイトの撮影現場を見ていると、一眼レフカメラを導入しているケースが増えています。以前は一眼レフといえば、「スチルカメラ」のイメージが強く、動画撮影の現場で見かけることは殆どありませんでしたが、最近はスタジオでの撮影はもちろん、スマホでの動画撮影に飽き足らないユーザーが一眼レフに乗り換え始め、動画撮影現場でのシェアを拡げています。そこで今回は「プロが薦める”一眼レフカメラ”の選び方」をテーマに、ビデオカメラとの違いや撮影テクニックなどを通じて、どんなカメラを選んだらいいかを探っていきます。



 

 



そもそもビデオカメラじゃダメなの?~一眼レフで動画撮影するメリット、デメリット

そもそも「一眼レフ」と「ビデオカメラ」では、設計思想に差があります。一眼レフの場合は、動画であっても「記録を始める前にすべての操作が終了している」スタンスですが、ビデオカメラの場合には「撮影中でも明るさやサイズを変える」ことが前提です。この点を踏まえて、機種を選ぶ必要があります。

一眼レフカメラで動画を撮影する最大のメリットは、やはり一眼レフならではの「ボケた絵を撮れる」ことです。
一眼レフの特徴を活かして動画でも背景をボケさせたり、特定の人物だけにピントを合わせたりなど、映画のようなシーンに仕上げることができます。さらに、一眼レフカメラのカメラセンサーはサイズが大きいため、光を採り入れやすく、室内や夜間などの暗いシーンが得意なのも強みです。このほか、魚眼やワイド、望遠レンズといった様々なレンズを交換して、バリエーションに富んだ撮影スタイルが可能な点も大きなメリットでしょう。

一方、デメリットといえば「長時間撮影に向いていない」ことです。元々は写真撮影用の設計なので、長時間、カメラ本体を持って撮影するには不向きですし、オートフォーカスにしても、途中でピントが切り替わってしまう場合が多く、ピントを再度合わせるなど、二度手間になります。加えて、ズームをする場合も両手で行う必要があります。
また、動画用途がメインでは無いので、バッテリーはあまり長くは持ちませんし、カメラの設計上、最長で30分程度の撮影しかできない機種もあります。音声面では、動画撮影時の音声入力もビデオカメラと比べるとタッチノイズなどが入りやすい構造になっていますし、そもそもヘッドフォン端子が無い機種もあり、音声のモニタリングに不安が残ります。

一方、ビデオカメラのメリットは、やはり「長時間撮影に向いている」ということでしょう。動画撮影に持ちやすいデザインで、軽くてコンパクトです。ズームも片手で可能ですし、かつ高倍率のものが多く、オートフォーカス性能も良いので、撮りたい画を逃しません。またバッテリーの持続時間が長いのも大きなメリットです。
その反面、一眼レフと比べてカメラのセンサーサイズが小さいため、部屋の中や夜間などの暗いシーンが弱点です。基本的にレンズは交換できないので、画面全体にピントが合った絵になってしまい、ボケを生かしたカットは難しくなります。写真撮影機能もオマケ程度のものが多いです。

 

一眼レフの選択ポイント~センサーサイズ、AF機能、手振れ補正 など

デジタルカメラには必ずイメージセンサーが搭載されていますが、カメラによって使われているセンサーのサイズが異なります。

一眼レフの場合、主に「フルサイズ」か「APS-C」サイズのセンサーが搭載されています。フルサイズはAPS-Cサイズよりも1.5倍程度大きく、当然、光の情報を多く取り込めるので、色や明るさの表現力が豊かな高画質になります。
もっとも、フルサイズセンサーを搭載したモデルは、主に中級以上のユーザーが対象で、高価格なため、初心者向けのモデルの大半はAPS-Cセンサーが搭載されています。

オートフォーカス機能も重要な選択ポイントです。動画撮影中にオートフォーカスが利かないと、フォーカスを手動で合わせる必要があり、手間が増えます。
最近の機種は、動画撮影中でもオートフォーカス機能を使えますが、ピントを合わせるスピードは機種によって大きな差があります。スピードが遅いと、撮影中になかなかピントが合わず、ぴんボケ映像になってしまいます。カタログには載っていないので、家電量販店で実機を触ってみたり、動画投稿サイト上のレビュー動画で確認したりしましょう。

三脚使用での撮影がメインであれば、あまり気にしなくて構いませんが、手振れ補正機能が利くかどうかもチェック要素です。撮影中に手振れ補正が利かない機種ですと、手持ちで撮影したときに動画が大きくブレてしまいます。動画撮影時の手振れ補正能力については「5軸手振れ補正機能付き」のカメラが有効なので、チェックしてみてもいいでしょう。

 

シーンに合わせたプロの撮影テクニック

普段は明るさをオートにして動画撮影に臨むユーザーが多いと思いますが、オートでの撮影では最適な明るさにならない場合があります。カメラの種類によってはゲイン(明るさ)の調整をできるものも多いので、まずはカメラ側の設定でゲインを調整してみることをお勧めします。
例えば工場の夜景を撮影する場合、F値は「4」シャッタースピードは100分の1、ISOは32000程度に設定すると。きれいに写ります。また、花火だとシャッター優先で、
シャッタースピードは50分の1、ISO1600 で露出補正をマイナス1程度にすると、観客などの薄明りの下もフォローできます。ただし、室内での撮影の場合、もともと暗すぎる環境で、強制的に明るさを上げようとすると、映像にザラツキが出て、画質の低下につながります。照明を使うなど、まずは部屋を明るくする対策を優先しましょう。

 

スポーツなど動きが激しいものの撮影は?

動きの激しいものについては、一眼レフ、ビデオカメラ問わず、原則として、三脚が必須です。スポーツの場合、撮影エリアが指定されている場合が多いので、プロレスの場外乱闘などを除けば、どんなスポーツでも手持ちでの撮影はまずないでしょう。もちろん、最近はバラエティ番組などで、小型CCDやGo Proを審判や選手などに仕込んで、臨場感を表現する演出もありますが、競技撮影のメインはあくまで三脚を使った撮影と心得た方がよさそうです。

近年は一般ユーザーでも4Kカメラが使えるようになりましたが、高精細であるほど、ブレや揺れは目立ちます。前述の手ブレ補正機能を利かせる手もありますが、特に列車の走行シーンの撮影で、「長玉」と呼ばれる超望遠レンズを使う場合、ブレを防ぐため、三脚を二本使って、ボディと長玉を別々に支えるテクニックもあります。

どうしても、手持ちでの撮影という場合には、スタビライザーで揺れを軽減する方法も有効です。スタビライザーには「電動式」と「機械式」がありますが、「電動式」の方が、カメラが安定しやすく、撮影に神経を使わずに済みます。この他、カメラのシャッターを遠隔で切ったり、タイムラプスを撮影する時に使ったりするレリーズも、RECボタンを押したときに生じる僅かなブレを防ぐことができます。

 

特性を見極めた上で機種選びを

これまで見てきたように、「フィックス撮影が中心で、レンズのキレなどを重視する」なら一眼レフですし、「手持ち撮影やズーム、パンを多用する」なら、ビデオカメラの方が使い勝手がいいと言えるでしょう。結論とすれば、ディレクターやカメラマンが、どんな画を求め、最終的にどんな作品に仕上げたいかによって、状況に応じた使い分けがカギになると言えそうです。

 

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 村松 敬太