世の中にあふれている「モーショングラフィックス」

世の中にあふれている「モーショングラフィックス」
2021年8月30日 ninefield

テレビCMで見られる「動きのある企業ロゴ」やミュージックビデオの音楽に合わせて「テンポよく動く図形やイラスト」を見たことがある方は多いと思います。これが「モーショングラフィックス」です。ロゴやイラスト、文字、図形、写真などに動きや音を加えて動画にしたもので、文字を読まなくても、より具体的な情報を記憶に残すことができます。よりメッセージ性の強い動画になり、視聴者に的確に情報を届けられます。今回はモーショングラフィックスのメリットと動画制作の際の留意点について、探っていきます。



 

 



プロジェクションマッピングも一種

モーショングラフィックスは、原始的なものから含めれば100年近い歴史があるとされます。ただし、デザインの世界で浸透し始めたのはパソコンが出現した1980年代からで、映画のタイトルやCM、映像演出といった分野でメインに使われていました。

その後、コンピューターやデジタル機器の進歩、インターネットの発達などにより、WEBやアプリでも盛んに採り入れられるようになりました。例えば、最近、目にする機会が増えたプロジェクションマッピングも、モーショングラフィックスの1つで、技術の進歩が映像を使用した多様な表現を可能にしました。

このように、モーショングラフィックスは、たくさんの情報を短い時間で効果的に伝えたい場合や、難しい言葉や概念を図で分かりやすく説明したい場合など、さまざまな分野での活用が可能です。そのため、モーショングラフィックスは今後も進化し続け、活躍するシーンの幅も広がっていくと予想されます。

 

モーショングラフィックスのメリット

では、どのような場面でモーショングラフィックスは使用されているのでしょうか。身近なところでは、テレビや映画のオープニングが代表的で、視聴者の関心を引いています。ほかにも、電車の案内画面、体感ゲーム、WEBサイトの動画広告、商品やブランドの宣伝、街頭の電子看板、美術館で見られるタブレットを用いたナビゲーションなど、数え上げればキリがありません。ここまで重宝されているにはその特性を探る必要があります。

モーショングラフィックスの最大の特徴は「グラフィックスが動く」こと。つまり静止画では伝えきれない情報を伝えることです。
具体的には、モーショングラフィックスでロゴを動かすと、静止画では伝えきれない躍動感などの雰囲気を表現できます。 いわば「動くグラフィック」であり、静止画像と動画の中間とみていいでしょう。動きや音でメッセージを伝える手法のため、文字数を抑え、シンプルに情報を伝えたいときにも向いています。ロゴやイラスト、文字などに音や動きを加えることは、静止画と比較すると、ユーザーに与える印象が強くなります。映画やテレビでのオープニングで、タイトルの文字が回転したりサイズが変わったりして、さまざまな動きで視聴者を楽しませるユニークな映像も、モーショングラフィックスの1つです。

加えて、言葉の壁を越えて情報を発信できる点も大きな優位性です。言語が分からなくてもジェスチャーで通じ合えるように、制作者の意図が伝わりやすく、動画広告への使用が効果的です。例えば、音声を使わずにイラストレーションの動きだけでメッセージを伝える表現にした場合、言語の壁を乗り越えられるので、グローバルな展開も期待できます。このように、モーショングラフィックスの表現方法はさまざまなので、ひとくくりに定義づけすることは難しいですが、日本語文化圏以外にも進出できる可能性があり、将来の市場拡大に大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
さらに、音楽や効果音などにリンクさせる動きは、見ていて癖になるような印象を与えられるため、自社製品やサービス、企業イメージなどの情報を発信したいときに大きな効果を生みます。今後の広告制作ではさらに採り入れられていく可能性が大と言っていいでしょう。
 

インフォグラフィックスへの応用

自社製品やサービス、企業イメージなどの情報発信が可能ということは「インフォグラフィックス」への応用が可能なことに通じます。インフォグラフィックスとは、インフォメーションとグラフィックスを掛け合わせた造語で、広義にはさまざまな情報を一つにまとめて図形化したものを意味します。放送分野ではテレビのニュース番組に出てくるテロップなどが代表例ですが、放送以外の分野でも電車の路線図や各種のグラフ、さらには東京五輪でも注目されたピクトグラムなどもインフォグラフィックスの一種です。

伝えたい情報やデータをターゲットへ届けるには、その情報を一目で見て理解してもらう必要があります。その点、インフォグラフィックスに動画的な要素を加えれば、イラストや図形などを使い、ビジュアル化することで、より印象に残るコンテンツをつくることができます。Webマーケティングやコンテンツマーケティングなどはもちろん、普段のプレゼンテーションの現場でも応用でき、大きなインパクトが期待できるでしょう。

 

制作上の留意点と選択肢としての業者依頼

モーショングラフィックスは、映像を利用したコミュニケーションツールですから、さまざまな動きで視聴者を楽しませることはもちろんですが、加えてユニークな映像で、企業側が伝えたいメッセージを視聴者へ強く印象付けなければなりません。最近はモーショングラフィックスを作成するソフトが進歩し、個人でも扱いやすい製品が出てきていて、参入のハードルは下がりつつあります。しかし複雑で情報量の多いものをひとつにまとめて分かりやすく説明するためには、情報を整理し、分析した上で動画制作を始める必要があります。

さらに言えば、情報の整理と分析をしたのち、文章や図形、全体のデザインの配置などを決めて編集しなければなりません。「整理」をしつつ「分析」を行い、最終的に「編集」をするという三つの工程を経ますので、どうしても制作する時間がかかってしまいます。未経験者なら他の業務に影響が及ぶでしょう。

未経験者が陥りやすいもう一つのハードルが「情報の伝え方」です。これはモーショングラフィックスに限った話ではありませんが、さまざまな情報をわかりやすく伝えようと、ひとつにまとめる際、情報の伝え方をどうするかは頭を悩ませるポイントです。情報やデータの整理方法、さらには全体のデザインの配置を間違えると、伝えたい情報の事実と「異なって解釈されてしまう」可能性があります。誤解が生まれないよう、どのように事実を伝えるか、注意が必要になりますが、これもある程度の経験が無いと、覚束ないでしょう。

仮に未経験者が四苦八苦して、動画を完成させたとしても、その後に控える様々な分析や集計といったアフターの作業が待っています。こうなると、自社で労力をかけて制作することは、必ずしも効率的とはいえません。もし、そのリスクを回避したいならば、プロへ依頼や相談をした方が、はるかにクオリティの高い結果が保証できます。プロへ任せれば、高額な機材や編集ソフトを揃える必要がありませんし、これまでの実績や経験から、最適なアドバイスが期待できるでしょう。企業として、自社の情宣活動にモーショングラフィックスを活用してみたいと考える担当者は、是非、一度、プロへの相談をおすすめします。

 

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人