近年、”働き方改革”という言葉を耳にする事が皆さんもあるのではないでしょうか。
働き方改革というものがどういったものなのかはこの後述べますが、それに加えて映像制作という職種が私たちの日常の中で職業として身近になった今、この”映像制作”という業界の中でどのような働き方改革・取り組み・就業形態を設けられてきているのでしょうか。
働き方改革の定義と目的
働き方改革というものは、これまで日本企業で当たり前だった労働環境を大幅に見直す制度のことを言います。この改革を掲げる上での目的としては、一般企業における労働者一人ひとりに柔軟な労働環境の選択を可能にする事を実現させるためとされています。
これらを求める事で
・国は労働者の増加に伴う税収増
・企業は労働力と生産力の確保
以上2点に繋がるのではないでしょうか。
しかしながら、この方針も近年に問題視されてきた長時間労働における過労死の防止や非正規労働者(契約社員や業務委託労働者、アルバイトなど)に対する不合理な待遇差を早急に見直といった方針ですが、従来の習慣を大幅に見直すという事ですので
“既存の形を変える”
ということになります。つまりは面倒だと言ってるようなものなのです。私たちも生活の中で、長年自分に染み付いた生活習慣やルーティーンを見直し、改善するということに置き換え考えてみても中々簡単なものではないと感じてもらえるのではないでしょうか。やはりその改善は企業にとっても簡単な改革ではないようで、法令の基準を満たすだけの取り組みが行われるケースも少なくないようです。つまり”形だけ”という状態になってしまいます。
従来の業界の労働形態
ここまで”働き方改革”という大きな括りでの話をしてきましたが、掘り下げて映像制作業界という観点で見るとどんな改革や改善に繋がっていくのでしょうか。そこで長年映像制作業界に携わっている私の知人に話を聞くことが出来ました。
私の知人Aさんは約15年間、メディア媒体を主に扱う映像制作会社に勤めていて、今回は知人Aさんから入社当初から近年までの働き方を今回の題材に沿って以下のように語ってくれました。
「僕が会社に入社した当初はまだまだ上下関係も厳しい時代でした。会社自体の出勤時間は9時半や10時ですが、下っ端の平社員である僕や他の同期の人たちは毎日先輩や上司よりも早く出社して仕事の準備や掃除をするところから1日が始まり、その後、先輩達から振られる雑務こなしてました。それらの業務が一通り終えた後にやっと自分が抱えている本来の仕事に取りかかれるような時間のサイクルでした。自分がやるべき仕事のスタートが他の社員の人たちよりも遅くなってしまうこともあって、残業も当たり前、頼まれる仕事量も増えていき、ついには誰よりも仕事を抱えるという毎日の連続でした。勿論、帰る時間も日に日に遅くなり、終電で帰れればまだいい方です。僕の中では夜中にタクシーで帰るのが当たり前になっていて、電車で帰るという概念はなかったですね。その1日を終えてから翌日も早く出社する。早く出社するというのも30分くらい早く行くなんてものではなく、1時間~2時間早く、もっと早い時には始発の電車が動き出す前の時間から会社にタクシーで向かうなんて事も当たり前でした。睡眠もまともに取れず、4時間寝れればいい方でプライベートの時間は無いに等しかったですね笑。」
この就業状態から体調不良を訴える社員さんも出てきてしまい、入社するも早々に退職をしてしまう若者も少なくなかったといいます。個人的な見解ですが、客観的に見ても今の時代からしたらあまりにも想像がつきにくい状況で退職者が出てきてしまうことはやむを得ないというのが率直な感想ですね。ただ一方で、今のようにSNSやインターネットなどが発達しているという事もなければ媒体も少なかったことも事実です。情報を発信する術がメディア中心となっていたということを考えればこれも致し方ないという状況だったのかなと思う自分もいます。
ではこのような状況を踏まえて、現在のようにインターネットやSNSが発達してきている中、働き方はどのように変化してきたのでしょうか。
今ある姿
前章の内容を受けて、現在の映像制作業界の働き方はどのような変化をしてきているでしょうか。私の持論ですが、結論から言えばかなり働きやすく労働者一人ひとりの生活や条件にコミットした働き方が可能になりつつあるのではないでしょうか。それについても知人Aさんが語ってくれました。
知人Aさんもここ何年かの間で自身が抱える仕事量とそれに対して取り組む環境が変わってきたと言います。勿論、時期によって左右されてしまう事はあるが、ある程度ゆとりのある生活、自分の時間というものを使える余裕があるそうです。
「ここ何年かでインターネットの成長が大きく見られる事が多く、映像制作業界にも多角化が見られ始めクオリティと効率を求めるようになってきたように思えます。以前はあれもこれも全部自分がやらないとという働き方だったものを映像を扱う媒体が増えてきたこともあり、ある程度の仕事量で割り振られるようになってきました。それに加えて、より円滑に沢山の仕事を行えるように、抱えている仕事を如何に効率良く、ハイクオリティで納品するかっていうところを重視してくれるような感じもしてますね。最近では自分の働きやすい時間に出社したり会社以外で勤務する事も増えてきたんでとても作業効率が良くなって心境的にもストレスはかなり減りました。」
Aさんが言うように、最近ではクリエイターにとっての作業効率を重視されているように見えますね。その原因として考えられることは以下の2つではないでしょうか。
1.映像という商品が需要過多な状況になり、企業側も商品のクオリティや納品効率を求めた結果、第一にクリエイターに対しての待遇や配慮を見直した
2.インターネットやSNSの普及により情報を発信できる媒体が増えてきた上に、会社に所属せずにフリーランスという形で業務を行うクリエイターが増えた
主にこの2つであると考えられますが、これら2つの原因も繋がっていると私は考えます。
Aさんの話でもありましたが、近年ではSNSやYouTubeなどが急スピードで成長を見せており、簡易的な動画や映像の制作であれば独学で制作が出来たり、その状況に応じてレクチャースクールなどが開業されてきた事によりもっともっと映像制作というものが世間の中で身近な業界になってきたのでしょう。
更に映像という商品に対しての需要が増えてきた事から個人で力をつけて独り立ちして、フリーランスという形で働くクリエイターも増えつつある現状を考えると、企業側も在宅・リモート勤務やフレックスタイム制などといった制度を導入して一人ひとりのクリエイターが制作に徹しやすい環境を整えていくことが、提供される商品のクオリティや生産効率にも繋がるのではないのかなと私は考えています。
今後の展開
これまでの映像制作業界の働き方という点で切り取って見ても、近年までの改革は当時では考えられないものだったのではないでしょうか。そしてこれからの5年後、10年後は現状よりもインターネットが今よりも発達していくことを前提として考えれば、映像制作や動画編集などに必要な技術・知識への需要が高まると予想されます。その需要が高まっていく中で、クリエイター一人ひとりがより良い商品を生み出せる環境づくりや効率化というものを提供・実現させることが企業や業界に今後求められる一つの課題ではないでしょうか。従来は主流であった、直接オフィスなどに行き、同じ空間でアイディアや情報、意見などを共有するというビジネスモデルからインターネット上のクラウドでの商品の確認やSkypeなどのビデオ通話アプリやコミュニケーションツールを使用した、対面以外の方法でもやり取りが簡単に行えるこの時代であるからこそ、その流れに沿った働き方が今後は主流になってくると私は感じてます。それが現代の映像制作業界における
“働き方改革”
ではないのでしょうか。